第一章 勇者ご一行



「『薬草10個、毒消し草5個、満月草3個』・・・明らかにこの金じゃ足りないだろ」

最初の指令は『あたしが王に会ってる間にメモに書かれたことを済ませて噴水まで集まりなさい』だった。リューンとフメイにメモに何が書かれているか聞きたかったが、二人とも見せてはくれなかった。これを買い物ゲームか何かと勘違いしているような気がする。騙されるな、これは所謂パシリだ。だが、そうとわかっていながら買い物に行く俺が一番切ないような気がする・・・。

歩きながら考えたが、思えば俺が魔王を倒すように説得すればいいんじゃないかと思った。テドンのためにも、ここで引き下がるわけにはいかない。だから、旅の中で俺があいつを説得する。いい案だ。多分。
だがここで問題なのがアリアがそう簡単に折れるかどうかということ。・・・・無理な気がしてきた。

そんなことを考えているとすぐ道具屋について。忙しく接客に勤めている男従業員を見ると、すぐに手元の金を見た。この金で許してくれるだろうか。いや、無理だろう。とりあえず聞いてみないと何も始まらないな、と思い意を決してカウンターに向かう。

「薬草と毒消し草と満月草ください」
「あー、悪い兄ちゃん。今国がカンダタ討伐のために買い占めてんだよ」

・・・金以前の問題だった。



「―――と言うわけだ。わかったか?」
「そんなの、その従業員の家の救急箱から取ってくればいいじゃない」

噴水にそれぞれメモに書かれた物を持ち寄ったが、俺だけ手ぶらだった。その俺をアリアは睨み付け、一応理由だけ聞いてやると言った。だから必死で説明してやったのに、これだ。その女王発言は一体何処から湧いてくるんだと問いたい。そんな俺たちをリューンとフメイが面白そうに見ていた。
ちなみに、メモの内容はリューンがカザーブまでの馬車の手配で、フメイが10Gを闘技場で1000G以上にすることだった。どうやら当たり外れがあったメモだったらしい。

「そのカンダタって何です?」
「盗賊だ。この前ロマリア城から金の冠を盗んだ盗賊」
「冠を簡単に盗まれるなんて馬鹿じゃないの。警備がおかしいわ」

不機嫌ですと言わんばかりの表情でブツブツとアリアが文句を言う。ふと俺は違和感を感じた。普段の(と言っても会って数時間だ。それでもこいつの性格はかなり掴んだと思う)こいつなら我関せずとばかりにそのままカザーブに向かいそうなものだが。

「アリア、カンダタを倒してこい、とか言われた?」
「・・・・・・」

無言。すなわち肯定。リューンの問いに黙りこくったアリアに何てことだと言いたくなった。カンダタと言えば凶悪な盗賊だ。ロマリアや近辺の街や村に居れば必ず聞くほどに有名な。そして強い。ロマリアの警備網をかいくぐって盗んだのだから盗みの技も相当だろう。

「断ったんじゃなのか?」
「受けると思ってるの?」
「思ッテマセン」

「・・・・決めたわ、その依頼、受ける」
「・・・・・・・・は?」

わけがわからない俺たちを余所に、アリアは再びロマリア城に戻って行こうとしていた。何事もなかったかのように付いて行くフメイはいいのだが、俺とリューンはその場に止まったまま。そんな俺たちに振り向いて、「何やってるの、早く行くわよ」と冷たい声色でアリアは告げた。

「何なんだ、あれ」
「さぁ?まぁいいんじゃない?」

俺より早く回復したリューンはさっさと先に行っている二人を追いかけて行ってしまった。残されたのは俺一人で、溜息を吐いて後を追った。




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