「あーあーあーどうすんのこれ。まさか砂交じりのやつかけるわけにはいかないんじゃない?」
「大丈夫だろ。バレなきゃ」
「クロトっ、そういう問題では・・・」
「やった本人が言える立場じゃないと思うがな」
「シェイド言うねぇ。―――わっ!?」

ビュウッ、と強く風が吹き、粉が舞い上がる。
それは瞬く間に村全体に広がり、やがて雪のように空から降ってきた。
傍に居た男がうめき声を上げる。

「あ・・・れ?なんだか凄く眠ってた気が・・・。あ、早く行かなきゃ!」

男は言うが早いか駆け足で何事も無かったかのように駆けていった。
その男を筆頭に、あちこちで人の声がし始める。
まるでそれが当たり前だったかのように動き始める村に、ミレーナたちは呆気に取られた。

・・・うっそぉ
「あっさり、だな」
「眠っていたことにも、気づいていなかったのか・・・」
「ま、まぁ良いではないかっ。目が覚めたのじゃから」

まるで昨日寝て、起きたかのように
ノアニールの村は十年を飛び越えて動き出した。



四人は男の家へ向かった。
村人がまだ眠っていたとき、ただ一人起きていた男。
だがその家には誰も居なかった。

「どういうことだ?」
「逃げた・・・わけじゃねぇだろうな」
「何から?」

埃も被っていないため、人が居なかったとは考えにくい。
何処かに出かけているのか、それともクロトの言うとおり逃げたのか。


「・・・誰ですか?」


そんな時、声がした。
見ると入り口に、水色の髪の少女。
意外そうに、けれど表情の変化はあまりなく。

「えーっと・・・ここの人、知らないかな」
「デューなら、居ませんよ。先週ダーマに発ちました」

この村に先週は『存在しない』。
それなら、十年前と言った方が正しいだろう。
だが十年前にここを出たのだとしたら・・・。
全員顔を見合わせる。

「えーっと・・・サフィ、さん?これにはふかーい事情が・・・」
「ミレーナ?」
「・・・知り合い、でしたか?」
「・・・・・・・あー」

少女だけではなく、全員から投げかけられた視線にミレーナはしまった、と心の中で呟いた。
名前だけなら、エルフの所で出したが詳しくは話していない。
そもそもほんの少し出しただけなのだからクロトやヒスイが覚えているかどうかも怪しいものだ。

「みんなには後で説明するから、さ。サフィさん、ちょっといいかな」
「・・・・。俺たちは、村人を集めて事情を説明すればいいんだな」
「うん、ありがとうクロト。それじゃあ後で」

ミレーナはサフィの腕を引いて外に出て、そのまま道がわかるかのように細道を辿って村はずれに向かった。

クロトはシェイドとヒスイと目を合わせる。

「まずは村人を集める」
「よし、私は入り口側から時計回りに行こう」
「僕は反対だな」
「俺は主に中央部の建物の中に居る人たちを。集合場所は中央のあの広い広場」

頷き、三人はそれぞれ散る。







意外にチームワークできてるよな、とクロトは思ったがそれを口には出さなかった。












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