「クロト、階段あったぞ!」
「わかった。コイツら蹴散らしたらすぐ行く」

斧を振りかざす盗賊の攻撃を避け、クロトはひのきの棒で敵の腹を突いた。
盗賊とはいえ人間。
うめき声をあげるとその場に倒れ伏した。

今ので遭遇三回目。
一回目は二人で、二回目はヒスイが、三回目はクロトが担当して襲ってきた盗賊を倒していた。
ヒスイは素手なため死にはしないし、勿論血を流させることもほとんどないがクロトは違う。
二本の短剣を容赦なく敵に斬りつける。
だから最初の敵が持っていた一番害が少なそうな物を奪った。

「じゃが、よくひのきの棒などと攻撃力の低い武器を持っておったの」
「あぁ、これ?ひのきの棒なんかじゃねーよ」
「は?」

階段の途中でクロトは止まると、手に持っていたひのきの棒の先端をぐるりと回す。
簡単にそれは取れ、出てきたのは切れ味の良さそうな刃物だった。

「これ、仕込み棒」
「よく気づいたのぅ」
「武器マニアがアリアハンに居たんだ。あいつの家に遊びに行った日にはそりゃあもう延々と・・・
あぁもう思い出しただけで腹が立ってくるっ」
「・・・そうか」

見た目や普段の言動を裏切り意外に短気なクロトは階段を駆け上がる。
それを何となく気づいていたヒスイもやれやれ、と言いながら上がる。


まだまだ先は長い。



大の大人八人。
対してこっちはか弱き乙女一人。
不公平じゃないかとミレーナは呟いた。
クロトが居たならば、誰がか弱き乙女だと言ったところだが。

「あー、ミスったー。でも音最小限になんて無理だし」
「ごちゃごちゃうるせぇぞ嬢ちゃん」
「でも手っ取り早くやっつけるにはこれが一番いい手だと思ったしなー」
「おいごちゃごちゃうるせぇぞって」
「だいたい男共・・・あぁ女の人もいるけど人数的に不公平だって」
「ごちゃごちゃうるさ・・・・」
「このまま時間稼ぎして待つか・・・。いやいやそれじゃあラスボスの手柄取られちゃう可能性大だし」
「おい、いい加減に・・・」
何!?さっきからごちゃごちゃと!あんたら少し黙ってて!

理不尽だ、と誰かが呟いた。
あーでもない、こーでもないとブツブツ呟くミレーナにその言葉は聞こえていない。
少々俯き気味だから、周りの盗賊が勢いよく頷いたのも見えていない。
もう攻撃するか、と盗賊たちが目で合図し、彼女に襲いかかろうとしたとき、ミレーナはポンッと手を叩いた。

「よし決めた。なんか腹立っちゃったからあんたらぶっ飛ばしてクロトたちより先にボスもぶっ倒す」

笑顔でそういうと、ミレーナは手を上にかかげる。
さっきまでの天候は何処へ行ったのか。
あっという間に当たりには暗雲が立ちこめた。
魔法使いらしき男が何をするか気づき、逃げろと叫ぶが時既に遅し。

全員階段から少し離れた場所にいた。

「ヒャダイン!」

凍てつく氷が雲から落ち盗賊たちを貫き、それに耐えかねて倒れた。
致命傷からは程遠い位置。
だが気絶させるには十分で。
さすがに耐性の強い魔法使いの男は息切れ切れに立っていた。
八人の血で、赤くなった床を歩きつつミレーナは女盗賊から細身の長剣を奪う。
同じ事をクロトがしているとは知らずに。

経っているだけで精一杯、というような男にミレーナは近づくと剣の柄で容赦なく殴った。
倒れる男の意識がないことを確認する。

「使えるかわかんないけど・・・ベホマラー」

バルシーラと共にロマリアで見つけた本に書いてあった呪文をミレーナは唱える。
癒しの光が広がり、盗賊たちの傷を癒した。
意識は目覚めないが。

「やっぱやるもんだね。バルシーラだってぶっつけ本番だったし・・・さすが私!」

調子乗んなバーカ。
こら、クロト!そんなことを言うではない!
そんな幻聴が聞こえてきそうでミレーナは微笑んだ。

階段でイオを使って道を閉鎖する。
完全に塞がったことを確認すると、ミレーナは階段を急いで降りた。






待ってろカンダタ。この私が絶対ぶっ倒す!












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