ミレーナside

「さすがロマリア。アリアハンよりでかいわ・・・」

並ぶ本たちに、ミレーナは感嘆の溜息を漏らす。
何年もかけて全てを読んだアリアハンの図書館とは比べものにならないほどの本。
本棚がいくつも並び、隙がないほどに本が敷き詰められている。
こりゃあ読みがいある。
心の中で呟き、ミレーナは魔法の欄へと歩いた。




「ざっと集めただけでこんなもんか」

本来なら十五人程度で使う長机の半分が本で埋められていた。
周りは既にミレーナが勇者ということを知っているらしく、咎める者は居ない。
気合いを入れ、ミレーナは手短な一冊目に取りかかる。


さすが素晴らしい集中力の持ち主。
周りなど既に頭に入っていなかった。




「・・・っ!?」

何時間経っただろうか。
読み終わった本は既に二十を超えている。
止まることのなかった彼女の手が、初めて止まった。

「(ホイミ・・・ベホイミ・・・ベホマ・・・ベホマラー・・・ベホマズン・・・)」

書かれている呪文を指でなぞる。
アリアハンにはなかった本だ。
その本にはベホイミの呪文までしか載っていなかったから。

「(ルーラ・・・・・・・・・・)」

次の一文でミレーナの手は完全に止まった。

間違いない。
間違えるはずはない。

「・・・・バル、シーラ」

間違えない。
絶対に、そんなことはありえない。


これは確かに、ティーンが最後に使った魔法なのだ。


「・・・今日は、徹夜しない程度に頑張らないとね」


覚えないといけない。今日中に。
ミレーナは羽のペンダントとロザリオを一緒に握りしめる。
優しい羽の感覚と、冷たい金属の感覚。






その二つが、このやるせない思いを沈めてくれることを祈って。

















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