クロトside

「さぁ、もう大丈夫ですよ」

猫の足に包帯を巻き、シスターはそう言った。
一応クロトのホイミをかけたが、念のためということだ。

「ありがとう」
「いえいえ。私たちの仕事でもありますもの」

微笑んだ彼女の青い髪が揺れる。
木製の箱の中に柔らかい布を置く。
その簡易ベッドに、シスターは猫を横たわらせた。

「でもしばらく歩くのはよした方がいいかもしれませんね。私が面倒を見ます」
「いいのか?」
「だって、貴方たちは明日発つでしょう?」

クロトは少し目を見開く。
何で知ってるんだ、と言いたげに。
シスターはおもしろそうにクスクスと笑った。

「もう知ってない人なんて居ませんよ?アリアハンの勇者のことは皆ご存じです」
「・・・速いな」
「そんなものです」

にー、と猫が鳴く。
その猫の頭を撫でながら、シスターは真顔になった。

「勇者と存じてお願いがあります」
「・・・話を聞いて、それから決める」
「わかりました。
ここから北に、ノアニールという村があります。そこに姉が住んでいるのですが・・・」

シスターは一旦そこで言葉を切る。
そして数秒の間を置いた後、また口を開いた。

「・・・眠って、いるんです」
「は?」
「見れば、わかると思います。連絡が取れなくなったのは十年前。
心配してルーラが使える知り合いに頼んでみて行ったんですが・・・」
「眠ってた?」
「・・・はい」


「わかった、カンダタの件が片付いたら行ってみる」


お願いします、とシスターは頭を下げた。
ロマリアはもう何年も前から諦めた。
頼れるのは、彼らしかいないと直感で彼女は感じたのだ。

「で、名前は?」
「はい?」

いきなり聞かれ、シスターは顔を上げた。
何を考えているか、読み取れないその表情でクロトは当然のように訪ねる。

「アンタの。シスターだけじゃ不便だから」
「あ、シエラです」
「シエラ・・・わかった。」






猫は頼んだ、と一言呟いて、振り返らずにクロトは教会を出た。

















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