ミレーナside

「薬草、おっけい。満月草、おっけい。毒消し草、おっけい・・・っと、これで全部かな?」

道具袋を点検し終え、ミレーナは背伸びをしてベッドに倒れ込んだ。
クロトが出て行き、ヒスイを送り出した後
必然的に自分が道具の確認などをすることになったのに気づいたのは随分と後だ。
指で髪をいじりながら、ミレーナは長い溜息を吐く。

「私としたことが一生の不覚・・・。こんなんだったら、昨日のうちにクロトとやっとくんだった・・・」

天井に手を伸ばす。
しかし当然のごとく届かないわけで。
残されたのは手と、その指に光る緑色の指輪。

それが何故か悔しくて、無意識に唇を噛みしめた。

「絶対・・・、絶対に・・・っ」

その先は言葉にならなかった。
正直、気が気では無かった。
アリアハン襲撃からまだたった一日だが、昨晩は悪夢にうなされミレーナは跳ね起きた。
寝付こうとするが、何度寝ても起こされる。
寝るたびに、繰り返しあの光景を思い出す。

「指輪と羽のネックレス・・・それにロザリオがなかったら、私今頃発狂してたかも」

何度それを握りしめたことか。

だが、それは自分一人ではないことをミレーナは知っていた。
節約のためにとクロトと相部屋だったが、隣のベッドではクロトも同じ状況だった。
悪夢なのか、シーツを握りしめ、唇を噛みしめ。
何度泣きそうになったことかとミレーナは思い出すたびに思う。

でも、勇者なんだから。


「あーだめだめ!前向きに前向きに!」

勢いよく起き上がると、ミレーナは手を上にかざした。
既に彼女の十八番となりつつある、イメージ出来る場所全てに移動できる呪文。

「目指すは王城!ルーラ!」





ミレーナはいつも通りの笑顔で宿から飛んだ。


















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