クロトside
「勇者、か」
一番静かそうな住宅街を歩きつつ、クロトは呟いた。
あの時、ヒスイは驚愕を隠せず、クロトは落胆の表情を浮かべ、ミレーナは仕方ないと困った笑いで。
腹いせに足下の小石を力任せに蹴飛ばすと、茂みに入り、ぎにゃっと猫の悲鳴が聞こえた。
「げっ」
動物好きであるミレーナと、(おそらく)同じ動物好きのヒスイが居たら怒鳴られること間違いない。
急いで茂み寄ると、猫が足から血を流していた。
石が角張り、尖っていたこともあってか猫は威嚇はするも逃げる気配はない。
否、逃げられない。
「悪い、まさか茂みにいるとは思わなくて・・・あぁ、ったく威嚇するな」
まったく近寄らせようとしない猫に、クロトは四苦八苦する。
使えないわけでもない程度のホイミでも、簡単な傷くらいは塞がる。
折角それをやってやろうとしているのに。
「・・・って元凶は俺じゃねぇかよ。痛っ、おい引っ掻くなって」
「ラリホー」
後ろから聞こえてきた女性の声によって猫は眠りについた。
何事かとクロトが振り向くと、そこには二十代後半であろう女性。
服装は、シスターのものだった。
「これで、大丈夫でしょう?」
「・・・・・そりゃ、どーも」
「よかったら教会にどうぞ?簡単な治療でしたらできますよ?」
「・・・・・・・・・・」
猫とシスターを見比べること約十秒。
「・・・お願いします」
その言葉にシスターはおもしろそうにクスクス笑った。
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