翌日、ヒスイは頭痛で目が覚めた。
ガンガンとバケツを頭の中で鳴らされている気分だ。
何なんだと痛む頭を抱えつつ起き上がった。
広がるのは間違いなく借りている自分の部屋だが、何故ここにいるかはまったく覚えがない。

「ヒスイ!起きて・・・るね」
「今起きた。それにしても、頭痛が酷い」
「あはは、それは絶対二日酔い。出発が明日でよかったー」

二日酔い?
思い返すがヒスイには飲んだ記憶がない。
覚えているのは食事を食べ、ミレーナたちと自己紹介をしながら脇にあったコップの中の液体を飲み・・・。
そこで彼女の思考は止まった。

「あれが酒じゃったか」
「いやー、まさかあれほど酒が苦手とは思いもしなかった」
「・・・まったく覚えてない」
「だろうねぇ。と言うより知らない方がいいって言うか・・・はい、水」
「すまない」

水を飲むと、少し頭痛が治まるのを感じた。
冷水は確かによかったようだ。
一息つくと、ヒスイは起き上がる。

「朝食、食べれそう?クロトが今下で食べてるけど」
「いや、食欲がないんじゃ。少し散歩でもしたい」
「わかった。あぁ、でも一応下に来てくれる?カンダタについて説明するから」

それだけ言い残しミレーナは部屋を出た。
少しドアが軋み、それに少し文句を言いながら。
ドアが閉まるのを確認すると、ヒスイは窓から外を見た。


綺麗な、それでいて賑わしいロマリアの町並みが広がっていた。


「ここがシャンパーニの塔。カザーブから南西に行ったところにあるけど、馬車で二日ってトコね。
カンダタ盗賊団は大体二十から三十って言われてる。でも伏兵もいるだろうからそれ以上って考えてていいと思う」
「おい」
「盗みは金持ちやあくどい政治家のみ。
結構裏でいろいろやってたやつらだから、一般市民の中では結構人気が高い盗賊団」
「おいって」
「戦力はー・・・まぁ結構やるみたいだけど、何とかなるでしょ」
「聞けよ」
「さっきから何」
「何でそこまで詳しいんだ」

ヒスイが揃うなり説明し始めるミレーナに、クロトが訪ねると返ってきたのは輝かんばかりの笑顔だった。
クロトとヒスイは一歩下がりたい心境に襲われたが、何分椅子に座っているため下がったら転げてしまう。
その体勢のまま、ミレーナの次の言葉を待つばかり。

「貴方たちがたっっっのしく会話を繰り広げていた中で私が酒場のマスターに聞いた情報だけど?」
「昨日のことだろうけど、別に全然まったく俺は楽しくな―――
「え?何か言った?」
「・・・・・何にも」

笑いが堪えきれず、声を出してヒスイは笑う。
ふふん、と言いたげにミレーナは机の上の地図を仕舞った。
クロトだけが居づらくなり、席を立つ。

「今日は自由行動だろ。勝手にやるぞ」
「別にそうだけど・・・あ、待って」

呼び止められたクロトが振り向くと、ミレーナの顔にふざけた調子は見あたらなかった。

「奪還隊は、私とアンタとヒスイの三人だから」
「はっ!?あの王は何人か雇ったって・・・」
「そうじゃっ。私の他にもいろいろ居ったはず」
「・・・・他の奴らは異口同音だったってよ」





そんなこと、勇者に任せればいいじゃないかってね。












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