『近くの町』に着いたとき、二人は唖然とそれを見ていた。
活気のある城下町に、中央に構える城。
「・・・どー見ても『国』じゃねーかよ。しかもロマリア」
「あっははははは」
「いや思いっきり笑い事じゃねーし」
「母さん何もこんなトコまで一気に飛ばさなくったって」
アリアハン城の資料室で見たことがあるロマリアの風景。
まさにそのまま―むしろ活気がある―のそれに、二人はしばし城門前で固まった。
アリアハンから一番遠いかもしれないその国。
自分たちの母の凄さに、言葉も無くなる。
門番の横を通り抜けようとしたとき、ずいっと目の前に槍が突き出されミレーナの足は止まる。
半歩後ろをついてきたクロトも同じ事で、何事かと問いかけてくる目に何も返せない。
「通行許可書を見せろ」
「・・・・・・・・・」
やばい、と二人は同時に固まった。
「無いならここを通すことはできない」
「え、ちょ、待って―――」
ミレーナが反論するが、大きな声が国内から聞こえた。
騒ぎ声、悲鳴。
城門前まで近寄ると、少し遠くに見える城からのようだった。
ミレーナは門番まで駆け寄る。
「何かあったんですか!?」
「わからない」
「行かなくていいの!?」
「我々の任務は門を護ること。城で何があろうが動くわけにはいかないのだ」
二人は同時に心の中で舌打ちする。
門番が何処かに行けば騒ぎに乗じて入れたのに。
が、次々と王城から出てくる馬の大群で、さすがの門番も目を見開いた。
黒い馬。
それに乗っている顔つきの悪い者たち。
止める間もなく、馬たちは次々とミレーナたちの前を通り過ぎ北へと向かっていった。
さすがにその場に留まっていることも出来ず、門番は城へと駆けだす。
「私たちも急がないと!」
「あぁ」
何かが起きているロマリア城へと、二人は駆けだした。
ロマリア城に入ると、そこは至って普通の―アリアハンと大して変わらない―城だった。
だが見張りが誰も居らず、静まりかえっているそこは不気味の一言。
「どうする?」
「見た感じあいつら盗賊団だった。っつーことは・・・」
「王家のお宝が盗まれた・・・!」
「多分な」
クロトが頷く。
ミレーナは重い溜息を吐く。
運命は、彼女たちに休息など与えてはくれない。
「誰だ!?お前たちは!」
兵が見張りに戻ってきたのか声を張り上げる。
二人は同時に振り返る。
兵は何を誤解したのか、仲間がいるであろう所に叫びながら向かっていった。
「残党だ!さっきの賊の残党が居る!!」
二人はお互いに顔を見合わせる。
弁解しようにも兵の姿はもう見えない。
「ねぇ、クロト」
「・・・何だ」
「私たち、もしかして今すっごいやばい状態じゃない?」
「かもな」
動きやすい服、しかも黒基準の服を着ている二人は、盗賊に見えないこともない。
もしさっきの兵が盗賊と戦って、その恐怖を植え付けられているとして。
そうしてちゃんと確認もせずに勘違いしてしまったのだとしたら―――。
続々と出てくる兵に両手を挙げながら、ミレーナは今後の脱走方法を考えていた。
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