数はそれほど多くは無いが、それなりの強さの魔物が揃っている。

まっさきにヒスイが走り出し、バリイドドッグに回し蹴りを喰らわせた。
一番先頭に居た者が横に吹っ飛び、壁に当たって沈む。
それを戦闘の合図にしたかのように後ろで待ち構えていた他のバリイドドッグバンパイアが襲い掛かってきた。
三頭まとめて飛び掛ってくるのをヒスイは軽々とかわす。
そしてかわすついでに拳や蹴りを淡々と喰らわせていた。
すると前に居たバリイドドッグがいきなり悲鳴をあげて倒れる。
何かと思えばナイフが深々と突き刺さっていた。
見ると、先ほどの場所から大して動いていない場所にシェイドがナイフを構えている。
なるほど、投げナイフも実践では結構役に立つわけか。
そう思いながらヒスイは後ろから飛び掛ってきたバリイドドッグをかわし、蹴りを入れた。

「さっすがヒスイ。シェイド役に立ったのってさっきの一発だけじゃん」
「お前なんて一回も役に立たなかっただろう」
「だって魔法使うまでもなかったでしょ。ヒスイ怪我は?」
「勿論」

大丈夫だ、と続けるヒスイにミレーナも笑う。
そして何を思ったか、いきなり服を脱ぎ始めた。
それに慌てたのはシェイドで、顔を赤くして叫ぶ。

「な、何をしているんだお前は!」
「大丈夫だって下にもう一枚着てるし。
あ、いっとくけど下は脱がないよ?
当たり前だ!!
「・・・助平」
「おい虫!当たり前の反応だろうがこれは!」
「私は妖精だって言っているでしょう!?」


「・・・ミレーナ、一体どうしたのじゃ?」


早くも進路が逸れ口喧嘩になってきたためヒスイが路線を戻す。
できるだけ身軽な格好になりつつ、ミレーナは湖を指差した。
シェイドとエルミシアの言い合いも止まり、三人は湖を見るがこれと言っておかしいところはない。

「いや、光ってるのが気になって」
「・・・光ってないぞ」
「光ってないわよ」
「光ってないと思うがのう」
うん、気持ちのいい否定ありがとう!

だがミレーナの目には底で何かが光っているように見えた。
ヒスイたちは目を凝らして見るが何も見えない。
熱でもあるんじゃないかとエルミシアがミレーナの前に飛んで額にその小さい手を当てるが、軽々と振り払われた。

「だぁからそれを確かめてくるんだって!大丈夫。異常があればすぐに上がってくるから」
「それなら私も・・・」
「ヒスイはお休み!さっき頑張ってくれたしね。じゃあいってきまーす」

静止の声も聞かず、ミレーナは湖に飛び込んだ。





元々泳ぎは得意な方だ。
苦手なのはどちらかと言えばクロトで、ミレーナがクロトに勝てる運動分野では堂々の一位入賞間違いなし。
クロトは泳ぎが苦手と言うより水が苦手なのだが。

素潜りで底の方まで進み、目的のものを探す。
すると結構近くで何かが眩しい光を上げていた。
何でヒスイたちはこれが見えないんだろう。
こんなにも眩しく光ってるのに。
不思議に思いながらも近づく。
目に見えるまで近づくと、それが何なのかがわかった。
箱だ。木製の。
光は所々に開いた隙間から漏れていた。

「・・・!!」

そしてその傍らには人骨があった。
思わず口を開けそうになりミレーナは手で塞ぐ。
よくみるとその人骨は二つあり、箱を抱いているようにして半分ほど埋まっていた。
悲痛そうな顔でミレーナは近づくと、そっと手前の人骨に触れる。

瞬間、電流が頭の中を駆け巡った感覚がした。
驚いて手を離すも、それは本当に一瞬のことだったため何が起こったかわからない。
再びそっと手を伸ばし触れるが、今度は何も起こらなかった。

不思議と、息苦しくならない。

とりあえず箱の方に触れてみる。
すると相当古かったのか、いとも簡単に箱は崩れ落ちた。


中にあったのは、ルビーだった。
大きな、赤い。
本当に赤いとしか表現できないような大きなルビー。
ミレーナは目を見開いてそのルビーに触れる。
そしてそのルビーを見た瞬間、今度は確実に電流が流れた。




『―――約束』







意識が遠のく中、女性の声を聞いた気がした。












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