妖精を見つけたのは奇跡に近い偶然だった。
昔から妖精とエルフは共存している・・・というのはお伽話にもなっており、
本当のことだと学者も証明しているため皆承知の上だった。
だがその妖精は結構な生意気で、集落の場所を言おうとしない。
集落を守ろうとしているのだから当然ではあるが。
そこでどうしたものかと頭を抱えているところに、ミレーナが閃いた。
何をするのかと思えば、彼女は黒い笑みを浮かべながら手に炎を生み出したのだ。

『え、え、え、え、え、ちょちょちょちょちょーっとストップ!落ち着きましょう、お嬢さん!?
その炎で何をする気なのカナ!?
『エルフとか妖精って、木とかの加護受けてるから火に弱そうだよねー?』
『あ、あははははは。まさかその炎をあたしにぶつけちゃったりとかしないわよね?ね?ね?』
『んーん、火あぶり♪
ぎゃぁぁぁああああ!

黒い、とシェイドが呟き、ヒスイも頷いた。
クロトは何も返さない所、免疫があるのか気づかないのか。
普段の彼女からは想像できない変貌ぶりに心なしか恐怖を覚える。
敵に回したくないタイプだ。
おまけに頭の回転も速いものだから、手に負えない。

『さぁ連れてってくれるよね?そのじょーおー様とやらの所に♪』
『そんなのするわけな―――って熱い!熱い!わかったわよ、連れて行けばいいんでしょう!?』
『うんうん、偉い偉い』

振り返った時には既に通常のミレーナに戻っていた。
シェイドは心の中で密かに『黒モード』と名付け、被害を受けないようにしようと心に誓った。


そして冒頭に戻る。


「それより、先ほどから視線が気になるのじゃがのう」
「右に同じ」
「私もー。んー、エルフなんだろうけど・・・人見知りするだろうしねぇ」

前で激しい口論を繰り広げているシェイドは気づかないらしい。
あちこちから投げかけられる興味や恐怖が入り交じった視線に居心地の悪さを覚える。
クロトがふと右を向くと、一人の少女と目が合った。
珍しい緑色髪、白い肌に尖った耳。
焦った様子ですぐ近くの木に隠れるが、興味津々で木から覗き見ている。
再び目が合うと、再度彼女は木に隠れる。
その尖った耳が出ていることを教えてあげた方がいいのだろうか、と少し考える。

「クロトー?何やってんの?置いてくよー」
「今行く」

気づけばミレーナたちとかなりの距離が空いている。
少々駆け足気味でクロトは三人(と一匹)に追いついた。


「・・・でもまぁ貴方たちも随分と無駄なことするのね」
「無駄なこと?」

シェイドとの口論で何があったのだろうか。
ボサボサになって髪を手櫛で元に戻しながら妖精は振り向いて言う。
後ろ向きで飛んでいることに不安を感じたのか、また前方を向いたが。

「そうよ。無駄なこと。だって女王様たちがあの呪いを解くはずないもの」
「呪いの経緯は知ってる。けど、それは間違ってるってことを私たちは言いに来たの」
「・・・人間にしては珍しい考え方だけど、でも―――あぁ、ここよ。ここが女王様たちの屋敷」

他より遙かに立派な木造の屋敷。
扉の前に門番らしきエルフが立っている。
そのエルフもやはり緑色の髪で。
何事かと凝視していたが、耳が見える位置まできたのだろう。
ギョッと目を見開いて、叫んだ。

「人間!?人間が何故ここへ!?」







とりあえず人間の好感度の低さは痛感できた。












NEXTorDQ TOP