中に居たのは、髪の薄さが気になる四十代くらいの男だった。
男は入ってきたミレーナたちに対して驚いた様子もなく、笑顔で招き入れる。

「君たち、旅人かい?」
「貴方は・・・眠って、ないんですね」
「あぁ、私は大丈夫。ちゃんと動ける」

男は笑うと、立って歩いてみせた。
それから席を勧め、勧められるままにミレーナたちは席に着く。
男は手を組み、静かに喋る。

「何か、訊きたいことはあるかい?答えられることなら答えよう」
「・・・私たちは、アリアハンの勇者です」

言うべきか迷って、そしてミレーナが返した言葉に男は目を見開いた。

「そうか・・・、もうそんなに年月が・・・。いやはや、オルテガ殿が来たのは十年前・・・もう、そんなに」
「娘のミレーナ、そしてこっちが息子のクロトです」
「ミレーナ殿に、クロト殿。なるほど、目はオルテガ殿似だな」
「はぁ・・・」

懐かしむように呟くこの男は、オルテガとは顔見知りなのだろう。
だがまったくと言っていいほど覚えてない父親の話をされたところで、感動もなにもあったものではない。
別に関係を聞こうとも思っていないので、適当に相槌を打ってミレーナは本題に入った。

「それより、私たちはノアニールが何故こうなったかを訊きたいんですけど」

「そうですね。何よりも気になることでしょう。

・・・十三年前、ここから西にあると言われるエルフの集落に居るはずの
一人の女性のエルフが魔物に襲われており、それを助けた青年が居りました。

名をグラン。
村一番の剣の使い手で、お人好しで、困った人を放って置けない性格だったんです。
女性のエルフ・・・アン、というのですが。
彼女を助けたグランは・・・彼女に一目惚れしたんですよ。
彼女もまた、グランに惚れてしまった。

そこからが悲劇の始まりです。
彼女がエルフでなかったら、又はグランがエルフであったなら、それが一番よかったんですが・・・」

「・・・割入ってすまない。じゃが、何故エルフだったら駄目なのじゃ?」
「エルフはプライドが高く、又種族としての誇りも高いから。
でもそれ以上に、昔人間がした過ちをエルフは許してないから、だよ」

男に代わり、ミレーナが答える。
内容を知っている男やクロトは顔を少し顰め、シェイドやヒスイは首を顰めた。

「前、アリアハンの重要書類を読んでたら、見つけた。
人間はね、エルフの高い魔力に嫉妬し、恐れた。

そして何とか自分たちの力にできないかと考えた。
お互いに助け合おうと言う内容の条約を持ちかけた。
けれどプライドの高い、そして何より人間の浅はかな思いに気づいたエルフはそれを断固として断った。

・・・それからが、魔人戦争の始まり」












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