世界を救う旅ということの重大さはさすがにわかっていたのか、王はあっさりと王位返還を承諾した。
ただしノアニールの件が片付いたら一度戻ってくる、という条件付きで。


ロマリアの魔法使いにルーラでノアニールまで送ってもらった。


何より驚いたのは入り口近くに固まっている青年だった。
目を閉じ、ピクリとも動かない。
聞こえる息で、生きているのだと実感できた。

「本当に寝ちゃってる・・・」
「そうじゃな。じゃが、石のように動かない」

押しても引いても、縛り付けられたように青年は動かなかった。
近くにある宿屋の中の住人もしかり。
だが何故か埃は大してなかった。
クロトに依頼したシエラが来ていたのか。

少し遠くまで見に行っていたクロトが帰ってくると、ミレーナは顔を上げる。

「どうだった?」
「向こう側は全員寝てる。そっちはどうだ?」
「ザメハは効かない。・・・となると最後の希望はシェイドが見に行った南側、か」

ミレーナとヒスイは何とかを起こす方法を、クロトとシェイドは起きている住人を捜しに。
だがザメハも効かず、北側には起きている住人は居ない。
最後の希望はシェイドだが、これも可能性はとてつもなく低い。

「原因は、何だと思う?」
「何とも言えないけど・・・ザメハが効かないってことは、普通の魔法なんかじゃない。
ううん、そう何年もラリホーが効くわけはないから、もしかするとこれは―――」
「おい」
「あ、シェイド。どうだった?」

話しを中断し、帰ってきたシェイドを見ると、何故か手招きしていた。
居たぞ、と短く告げられた言葉にミレーナとヒスイの顔が明るくなる。


つまり、住人発見だ。





「あそこだ。明かりがついてる」

時刻はまだ昼にもなっていないが、確かにランプの炎が見えた。

「ホントだ。シェイドお手柄♪」
「か、からかうな!」

ミレーナが褒めるとシェイドは少し顔を赤くして顔を逸らした。
予想外の反応に、ミレーナは少し目を開いて、それから頭半分高いシェイドの頭を乱暴に撫でた。
銀髪を一つに結んでいるため、乱れたらまた結びなおさないといけない。
面倒くさいことを、とミレーナを睨み付けるが、彼女は悪びれた様子もなく笑う。

「いやー、結構シェイドって可愛いヤツだったんだね。私とんだプライド小僧だと思ってた」
「待て、僕の方が年上だ」
「たった一年じゃん」

「二人とも、置いて行くぞ。早くせんかっ」

見るとクロトやヒスイとの距離はだいぶ開いていて。
クロトに関してはすでに家の中に入っていた。







慌てて二人は中に入る。












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