「―――・・・メラミっ!」
「おいおいそれはもう見たぜ・・・っと!」

ミレーナの手から生まれた炎は、カンダタの斧でいとも簡単に消え去る。
壁に背をつけた状態で、ミレーナは目を見開いた。
だがしばらくその斧を見つめると、疲れたように溜息をつく。

「ドラゴンの角」
「大当たり。これはドラゴンの角からできてる」
「ドラゴンは絶滅したんじゃなかったっけ?残ってるのはガメゴンとかだけの筈・・・」
「俺たちゃ盗賊だぜ?嬢ちゃん」

からかい口調にミレーナは少々カチンとくる。
遺伝か運命か、彼女もクロトほどではないが短気だ。
だが戦闘ということで一応冷静にはなり、頭をフル回転させて作戦を練る。


が、カンダタが視界から消えた。


「!?」

次の瞬間には右横に回り込まれており、斬りつけられた。
衝撃で左に飛ばされ、壁にぶつかる。


血が、服を染めた。
そして床をも紅に色づく。
右半身を襲う激痛に耐えながらも、ミレーナはベホイミを唱えた。
傷口はだいぶ塞がるが、それでもまだ血は流れる。
先ほどよりは収まった痛みを堪え、立ち上がった。

「ヒュウッ、まだ魔力と体力が残ってたか」
「とう、ぜんでしょ・・・!」
「でも戦闘中に考え事は御法度だぜ?勘で動かないとな」

余裕のカンダタは斧の血を落としていた。


何をされたか、全然わからなかった。
クロトも速いが、それの比にはならない。
クロトはまだ目で追える。少しであれば反応もできる。
だが、カンダタはまったく目で追えなかった。

それが無性に、悔しい。


「・・・絶対に、勝ってやる」


じゃないと、この悔しさは収まらない。
何故か片割れの姿が浮かんだ。
得意そうに笑っているのだから悔しさ倍増だ。
宥めるはずのあの武闘家ですら、まだまだじゃの、等と言うものだから悔しさは更に倍。
幻聴っておそろしい。
そう考えたのは少し後。


「ルーラ」
「おぉう!?」

いきなり消えたミレーナにカンダタは本気で焦る。
逃げるのであればリレミトの筈だし、なによりこの狭い空間でルーラはないんじゃないかと。
だが気配を辿ってみると、それは背後にあった。

急いで振り返るがそこには居ない。
見上げると既に細身の剣はすぐそこまで迫っていた。
自慢の反射神経で斧を出し、阻止するが重みに堪えきれずに斧が弾かれる。

ありえない重さだった。
だがそれが何か理解する前に、カンダタは凄い力で飛ばされる。
壁に打ち付けられ、打ち付けられた箇所は盛大に凹んだ。
頭も打ち付けたため、揺れる視界を何とか起こせばそこには剣。

「おう、俺の負けか」
「・・・まぁね」

納得のいかない顔でミレーナは頷いた。
少しするとヒスイを担いだ男が上がって来る。
そして、少し後に少女を背負ったクロトが上がってくるのだ。






これにて、カンダタ戦終焉。












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