なるべく人目につかないようにと思ったのか、人間は裏道を通った。
運ばれてきたのは人間の家と思われるところで。
私たちの家より遥かに小さく、脆そうな家。
それでも中からは声が聞こえてきていた。

「ここ、俺の家。色々事情があって居候の身だけど」
「・・・そう」

今となって思うけれど、何故私はこの人間を信じようという気になったのか。
考えてみるけれどそれはわからない。
そんなことをしている内に人間は器用にも私を抱えながらドアを開けた。

「おかえ・・・」
「・・・グラン」

中に居たのは青い髪をした人間二人。
恐らくは姉妹・・・かしら。迎え入れようとした二人の顔はみるみる冷たくなり、私を抱えている人間を睨みつけていた。

多分、私がエルフだから。
この特徴的な耳のせいで・・・。

「こんな綺麗なお姉さんに何したのお兄ちゃんの馬鹿!
人でなし!スケベ!お兄ちゃんだけはそんなことしないって信じてたのに!」
「グラン・・・見損ないました」
「えぇえ!?ちょ、それごか―――」

・・・ではなかったらしい。
騒ぐ人間の姉妹と、私を抱えながら必死で否定する人間。
集落ではあまりない騒がしさに、思わず痛みすら忘れた。

「お兄ちゃんのろくでなし!女の敵!」
「だぁからそれ違うって―――」
「・・・それでグラン、私はその方の足を治せばいいんですか?」
「誤解だっ・・・ってそう!それなんだよ!」

そんなやりとりが面白くて、思わずクスクスと笑ってしまう。
人間は赤面し、その人間を兄と言った人間も同じく赤くなった。
そんな中もう一人の人間だけが淡々としていて、素早く回復魔法をかけてくれた。
私は回復魔法が使えないだけに、少し羨ましい。
足の痛みがスッと退いていき、傷は跡形も無く消え去った。

「・・・ありがとう」
「いえ。グランの拾い物はいつものことです。まぁ・・・今日は少々大型ですが」
「お姉ちゃん!そんな言い方しないのっ。
ごめんなさい。お姉ちゃんったら・・・」

人間って、こんなものだったのだろうか。
私のイメージや、周りのエルフが言っていた人間像とはかけ離れている。
エルフと変わらない温かさがここにはあって、寧ろ人間を忌み嫌うエルフより温かい。

人間って、こんなものだったのかしら・・・。

「それで、お兄ちゃん。そろそろ降ろしてあげたら?」
「え、あ、ごめんっ」

人間が慌てて私を降ろそうと、丁度言い場所を探す。
椅子に座っていた姉妹の片方が退き、そこに座らせてもらった。

「いえ、別にいいのだけれど・・・。その、色々ご迷惑をかけて・・・・」
「あ、それは気にしなくっても―――」
「・・・グランが治したわけではありませんが」
「サフィー!」