アッサラームは、夜にこそその本質が明らかになる。
この街の名物、ベリーダンス。
ベリーという人気の踊り子が居るからその名前なのだが、今日の主役は違った。

「わぁ・・・」

ベリーダンスの会場にはただ感嘆が漏れていた。
いつもはダンサーをはやし立てる声が聞こえるはずなのに、それもない。
皆ただ一人の少女に魅入っていた。
黒髪をたなびかせ、即席であるはずなのに迷いのないその踊り。
見とれて言葉も出ないのだ。

「凄い、です」

砂漠の夜は寒い。
やっと本調子に戻ってきたであろうサフィも驚いたように目を見開いていた。

「凄い・・・ヒスイ、やっぱり凄い」
「ミレーナ」
「・・・・うん」

クロトに言われ、ミレーナは口を噤む。
それほどまでに静まりかえっていた。
少しの物音すら許されない。
そんな空気が辺りに立ちこめる。

暫くしてその踊りが終われば、拍手喝采。
最初は嫌がっていたけれど、矢張り拍手を送られると嬉しいのだろう。
少し頬を赤らめたヒスイがお辞儀をしていた。
それを見守りながら、四人もそれぞれ拍手を送る。





そうして、夜は更けていく。





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