「・・・何やってんの。あいつら」
「おー、シェイドか。血の気多いからなぁ、あいつは」
「喧嘩っ早い、ネコ目・・・プライド高いと見た」
「大当たり」
男にしては長い髪を後ろで一つ結んでいる少年に、クロトが溜息を吐くのが見えた。
それにミレーナは溜息。
そこで煽ったらだめだってば。
肩を落としたミレーナにカンダタは声を上げて笑った。
「僕を馬鹿にするのもいい加減にしろ!」
「いや馬鹿にしてるんじゃなくってホントのことそのまま言ってるだけ―――」
「黙れ!」
「キレんなよ」
「・・・からかいがいありそうな子だねぇ」
「あれでも十七だぞ」
「嘘!?年上!?」
言っている間にも口論は(一方的に)激化しており、ついにはシェイドが武器を取り出した。
あーあ、と呟いたのはカンダタとミレーナ、二人同時だ。
同情したのは勿論シェイドの方。
クロトが奪って使っていた仕込み棒の刃を出し、本物の槍にした状態でシェイドはクロトに突撃する。
さすがは盗賊とでも言うべきか。
ヒスイに劣らぬ速さでクロトに向かった。
だが彼の同情すべきところは、あくまで『ヒスイに』劣らぬ速さであるということ。
「クロトに宝石一掴み」
「んじゃ俺はクロトにミレーナを彼女にする権利」
「何それ!?・・・っていうか賭けになってない!?」
背後にトンッ、と何かがぶつかる感覚にシェイドは目を見開く。
目の前に居るはずのクロトは消え、背後の感覚はクロトの短剣だった。
ただし、鞘に収めたままではあるが。
「・・・遅」
「くそっ」
呟かれた単語に頭にきてシェイドは槍を振り回すが、いとも簡単にクロトは避ける。
何回かの攻撃も全て避けられ、当人たちだけでなく全員が確信していた。
実力の差は、歴然で。
「このっ」
「はい、やめなさい馬鹿共」
「もうっ」
間に割り込んできた青年と少女に、シェイドと、彼に一発くれてやろうかと思っていたクロトは止まる。
セイカはシェイドの前に、カリーヌはクロトの前にそれぞれ立つ。
「シェイド、関係ない一般ピープルに武器で攻撃はルール違反です。そんなことも忘れましたか」
「クロトくんもっ。いっくらシェイドくんがムカついてムカついてしょうがないからって手ぇあげちゃだめ!」
「うわ、シェイドって子一方的に攻められてる」
「まぁあいつが悪いだろうからな」
諦めたのか、顔を顰めてシェイドは退く。
それを見届けた後クロトもカリーヌたちに謝り元の位置に座った。
「・・・賭けはどっちの勝利?」
「引き分け。いや、俺の勝ちか?」
「あっはっはっは、燃やすよ?」
「そりゃ困る」
見かけないと思ったヒスイは、すっかり酔って何故か説教をしている。
クロトもどれだけの酒を飲まされたのか、一時間とすれば真っ赤になっていた。
唯一無事なミレーナも連れ回され振り回され。
こうして宴はすぎていく。
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